開業への想い

2011-05-18

子供の頃、勉強も運動も得意ではありませんでした。
ただ、母の料理の手伝いをして褒めてもらうことが嬉しかったものです。
子供心に「人に喜んでもらいたい」と思うようになり、
中学生の頃には料理人を志していました。

高校を卒業する1980年代は、ヌーベル・キュイジーヌ全盛のフレンチに憧れ、
調理師専門学校に進むことに決めました。
その時、決して裕福でなかった父は、私を銀行に連れて行って入学金を手渡してくれ
「料理の道を進んで極めるも、また外れるも、お前の人生だ」と言いました。
心に染みる父の言葉を、決して忘れたことはありません。

専門学校で学んだ後も、その専門学校の助手を二年間務めながら勉強し、
さらに懐石料理店からリゾートレストラン、ホテルなどで修行して、
さまざまなことを学んでまいりました。
レストランやバーなどの新店のプロデュースも多数、手がけさせていただきました。
そして結婚し、子供が二歳になる頃に「自分の店を持ちたい」と考え、
平成七年暮れに『せき根』をオープンいたしました。

早いもので、それから二十四年が経ちます。
この間、宣伝などは一切いたしませんでしたが、
ありがたいことに二十四年間、毎月ご来店されるお客様も何組かおみえになります。
そんなお客様方と向き合いながら、
つねに「何を求めておられるのか?」を考え、
新たな創造の試みを続けてまいりました。

今も自問し、挑戦する毎日ではございますが、
「美味しい料理をお出しする」との根源は不変でございます。
単に高価な食材をそろえるのでなく、
たとえば「普通の大根を美味しく炊いてお出しする」ために、
出汁から器まで「手間をかける」ことを惜しまず精進を重ねる……
これが、せき根が考え、実践する理念と自負いたします。

さらに言えば、子供の頃に母の料理を手伝い、母の喜ぶ顔を見たこと。
そして、調理師学校に進む際に、入学金を手渡してくれた父の言葉。
こうした原体験が、せき根の理念の根源を成す「真理」でございます。

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